溺愛王子とヒミツな同居
「悪戯するにしたって、限度ってもんがあるだろ。
自分が“そんなこと”と軽く思ってることでも、他人を傷つけることだってある。
あの時は、お互い小さかったしそれで終われたけど、今ならまりやの気持ちだってわかるだろ。
人が人に与える影響力ってのは、自分が考えるより大きいものだってこと、今のお前なら理解できるはずだ」
大翔君の言葉を驚いた表情で、一切口を挟むことなく黙って聞いていた谷山君は、悔しそうに唇を噛みしめる。
賑わう周囲の中で、私たち3人がいる空間だけ違う時間が流れてると思うほど、沈黙が長く感じられた。
「……まりやにそんなトラウマができてたなんて、知らなかった。
俺は、ちょっとだけからかってやろうって、そんな程度の気持ちだったから。
俺のせいで、そんなふうになってるなんて……ごめん」
今さらこんな話をしても、私のトラウマが今すぐ消えるわけじゃない。
だけど思い出して、ちゃんと謝ってくれるなんて思いもしてなかった。
「素直に謝ったついでに、この間のこともちゃんと謝れよ。
お前、まりやに何しようとしてたか自分でわかってんだろ。
苦しい言い訳なんかしやがって、お前が謝るまで俺は許さないから」
「別にヒロに許してもらおうなんて思ってないよ。
それに、俺……まりやにしようとしたこと、謝んないから」
「祥吾……お前、いい加減にしろよ」
谷山君の悪びれもしない態度に、私もショックで怒りそうになる気持ちもあった。
でも今はそれよりも、人目が多いこの場所で喧嘩しそうな2人の最悪に悪い雰囲気に、胸が押し潰されそうな思いがする。