溺愛王子とヒミツな同居



「悪戯するにしたって、限度ってもんがあるだろ。
自分が“そんなこと”と軽く思ってることでも、他人を傷つけることだってある。

あの時は、お互い小さかったしそれで終われたけど、今ならまりやの気持ちだってわかるだろ。
人が人に与える影響力ってのは、自分が考えるより大きいものだってこと、今のお前なら理解できるはずだ」



大翔君の言葉を驚いた表情で、一切口を挟むことなく黙って聞いていた谷山君は、悔しそうに唇を噛みしめる。



賑わう周囲の中で、私たち3人がいる空間だけ違う時間が流れてると思うほど、沈黙が長く感じられた。



「……まりやにそんなトラウマができてたなんて、知らなかった。

俺は、ちょっとだけからかってやろうって、そんな程度の気持ちだったから。

俺のせいで、そんなふうになってるなんて……ごめん」



今さらこんな話をしても、私のトラウマが今すぐ消えるわけじゃない。



だけど思い出して、ちゃんと謝ってくれるなんて思いもしてなかった。



「素直に謝ったついでに、この間のこともちゃんと謝れよ。

お前、まりやに何しようとしてたか自分でわかってんだろ。

苦しい言い訳なんかしやがって、お前が謝るまで俺は許さないから」



「別にヒロに許してもらおうなんて思ってないよ。

それに、俺……まりやにしようとしたこと、謝んないから」



「祥吾……お前、いい加減にしろよ」



谷山君の悪びれもしない態度に、私もショックで怒りそうになる気持ちもあった。



でも今はそれよりも、人目が多いこの場所で喧嘩しそうな2人の最悪に悪い雰囲気に、胸が押し潰されそうな思いがする。



< 370 / 437 >

この作品をシェア

pagetop