溺愛王子とヒミツな同居



4限目が終わり、チャイムと同時に鞄を持って席を立つと、米倉が近寄ってくる。



何かと思えば、俺の両手を取りその上に鞄を乗せられる。



「まりやの鞄。今から迎えに行くんでしょ。

あの子のこと、よろしく頼んだよ」



自分が行きたいはずなのに、それを我慢してその役目を俺に譲ってくれた米倉は、遊園地に行ったあの日のことを知ってるからこそ、気を遣ってくれたんだろうとすぐにわかった。



何となく光の方も見ると、パチッとウインクして、俺に頷き返して手を振ってくる。



相変わらずな奴だけど、あいつなりにも米倉と同じで、頑張れよって言われてる気がした。



まりやの鞄を預かり、俺は保健室に向かう。



「失礼します」



引き戸を開けると、俺を見た先生はにっこりと微笑んでくる。



「藤沢さんの熱、少し下がって、さっき目を覚ましたところよ」



それを聞いて、すぐそこにまりやがいるってわかってるのに、顔が早く見たいと気持ちが逸る。



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