記憶トリップ
「手を出して?」


「う、うん。」


「いやいや、両手じゃなくて左手。」


「あ、そっか。」


スズの左手を掴んで薬指におもちゃの指輪を嵌める。


「給料三か月分の指輪だぜ?」


「ジュンの気持ちは三か月分の気持ちしかないの?」


その言葉にクスッと笑うとスズも笑った。


「また会おうね。」


「うん、また会おう。」


「約束だからね。」


「うん、約束だ。」


スズの瞳からは今にも涙が零れそうだけど、それでも笑っていた。だから俺も笑った、笑いあった。


すると、また眩暈がして意識が朦朧としてきた。


またか………。


意識が薄れゆく中、俺の瞳にはスズが映っていた。
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