徒花のリーベスリート
 彼の心を魅了した少女は、私と違って沢山の人から愛されている。
 かくいう私も、嫌いではない。
 寧ろ好きな部類だ。
 彼女は老若男女問わず万人から好かれる性格をしていた。
 純真で、朗らかで、言葉にも態度にも裏が無く、真直ぐに物事をみつめる姿勢は尊敬に値する。
 清く美しく品行方正だが、世間の穢れや不条理を知らないわけではない。
 完璧に何でもこなせる人間でもないが、どんなに失敗してもめげず腐らず自分の至らない部分を学ぼうと努力する。
 難しい学問は苦手のようだけれども、本当の意味で大切なことはきちんと弁えている賢いひとだと思う。

 だからこそ、姫巫女と呼ばれ皆から愛されているのだ。

 ……―――だからこそ、彼も愛したのだ。




 彼の隣に立つのは、彼女が一番相応しい。
 彼女の隣に立つのは、彼以外にありえない。

 お似合いよね、とまことしやかに囁かれるようになったのは、いったいいつ頃からだっただろう。
 周囲の人々がそう口々にもてはやして憧れるのも仕方が無いくらい、相性ぴったりの二人だった。
 私程度の女には、立ち入る隙などない。


 だから、ね。
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