糖度∞%の愛【改訂版】
「それでも私はアンタが好きだし、そうやって悩んで自己嫌悪してグルグルしてるアンタの力になりたいって、そう思ってるんだからね」
優しすぎるくらい優しい、真帆の言葉。思わず胸がツンとして目頭が熱くなる。
ここは会社だ。しかも食堂。泣くわけないはいかない。
なのに、なのにどうして……。
「俺だって、そんなふうにうじうじしてる沙織さんですら、大好きで可愛くて仕方ないですよ」
ふわりと、背中が温かいぬくもりに包まれた。
座っている私の後ろから、両側から手が伸びてくる。私の身体を挟むようにして、大きな手がテーブルに置かれて、その手と、声で誰だか分かってしまう。
抱きしめられているわけじゃない。でも抱きしめている状況に限りなく近い。
恋人のふれあいじゃない。でも、会社の先輩にする行動ではない。
周りの視線が、一気に私たちのテーブルに集まっているのが、見なくても分かる。
それでも私は顔を上げられなくて、ただ、彼方の綺麗な指を見ていた。
真帆の言葉に、彼方の言葉。
二人の言葉で、私の目からはとうとう、ありえないくらいに涙がこぼれていた。
「あーぁ」と言いながらも、どこか面白がっている真帆の声。
この声で、この状況から様々な憶測が飛び交っていることが、容易に推し量れる。この後みんなからあるであろう質問の嵐に、どう答えるべきか頭の片隅では考え始める。けれど、背中から伝わる温もりを、どうにかしようという気は起こらなかった。