糖度∞%の愛【改訂版】
思ったよりも力が入っていたらしい。投げた携帯は、向かいのデスクの脚に勢いよく当たって、電池パックとカバーが外れて散らばった。
ガシャンと派手な音が響いたからか、真帆が血相を変えて入ってきた。
「沙織!? 今の音……」
きっと低血糖で倒れたと思ったのだろう。でも私がちゃんと立っていることにほっとした表情を浮かべたあと、私の顔を見て顔を固くした。
そして、「……なにがあったの」そう、慎重に聞いてきた。けれど、私はさっきのことを頭の中で整理することにいっぱいいっぱいで、説明することが出来ない。
「電話したんでしょう?」
こくりと頷く。
そうだ、私は彼方に電話をした。それなのに……。
「五月女、出てくれなかったの?」
それにも、ひとつ頷いた。
彼方の携帯に出たのは、あの女の子。可愛い声の、あの女の子。
こんな時間なのに、彼方はあの女の子と一緒にいた。
ダメだ。
どれだけ彼方を信じたくても、信じられない要素ばかりが増えていく。
信じたいのに。別れたくないのに。
ただ、好きなだけなのに……。