糖度∞%の愛【改訂版】

どうしてこんな状況になっているんだろう。どうして私たち、こんな風になっちゃったんだろう。

食堂に、あの子と腕を組んで現れる前までは、いつもと変わらない笑顔を向けてくれていたはずなのに。
彼方の気持ちを疑うなんて気持ち、全然なかったのに。


「沙織?」


真帆の再びの呼びかけに、重い口を開いた。


「女が、出たの」

「……あの子?」


それにこくりと頷く。そして彼女に言われたセリフを伝えると、真帆も「あの子の嘘かもしれないでしょう?」と私も思ったことを言った。
でもね、真帆。
それでも、それでも……。


「電話の向こうで彼方の声がしたの」

「……、二人っきりじゃなかったのかもしれないわ」


少し考えた後の、真帆の言葉。確かにそうなのかもしれない。
あの子の言葉は嘘で、周りには二人以外に人がいたのかもしれない。
そうも考えられるはずなのに。


「どうしよう、真帆」

「……どうしたのよ」

「涙が、出ないや……」


悲しいのに。辛いのに。心はこれ以上ないってくらい泣いているのに。
胸が血を流しながらズキズキと痛むだけだ。

胸の痛みを誤魔化すように、ただ震える手でギュッと胸元を握りしめた。



―― 悲しすぎると、涙は出てこないんだね。

  ねぇ。
  離さないんじゃ、なかったの? ――


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