ゴッドネス・ティア
「せーのっ!」



二人で重い物体を抱え、掛け声と共に持ち上げた。


二人で持つのにも重い。



「レオナぁ…これなんですかねぇ…」


「ヒサノ」


「え、はいっ?」




「目ぇつむっとけ」



少しきつそうに物体を持ち上げるヒサノにそう告げた。


本人はレオナの突然の言葉にキョトンと目を丸くしている。



「えっと…どうして…」


「いいから、早く」



今度は力強く、ヒサノが反論出来ない程強く念じた。


もし、嫌な予感が当たっていたら…


ヒサノはそんなもの見てはいけない。



「…わかりました…」



レオナの珍しく強い言葉にヒサノは反論することも忘れて、そっと瞼を閉じた。


ヒサノが目を開いていないのを確かめると、レオナはパオーレ村一であった視力を使い、物体を舐めるように見つめた。








――――――――…





「きゃっ!」



ヒサノの小さな悲鳴と共に、物体が鈍い音を起てて転がった。


レオナは空になった腕の中をまだ見つめている。



「レオナぁ…いきなり離さないで下さいよぉ!
落としちゃったじゃない…」


「……………」


「レオナ?聞いてるー?」


「……っ!あ、ヒサノ…」



ヒサノがレオナの顔を覗き込んだところでハッと我に帰ったように顔を上げた。


腕は物体を持ち上げた時のままだ。



「どうしたんですか…?真っ青ですよ?」


「……うん…」


「うんって…、それよりわかったんですか?突っ掛かってこけた物体は」


「……………」






持ち上げた時、見たものは


予想通りのものだった。



ダランと垂れた腕、


力の抜けた足、


見開いた瞳孔、


口端から漏れる泡、


青白い肌、


氷のように冷たい体温…






それは、紛れも無く










人の死体だった。













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