ゴッドネス・ティア
「そうか…
ではそろそろ戻ろう。
村に入ってからかれこれ一時間程経過したが今だ何も収穫がない。
もしかしたらまだこの猛毒を放った犯人とやらがいるかもいれないからな…」



レオナの言葉を聞いて、決断したのか重い口を開いてそう皆に告げた。


その口調は早口だが適確に相手に伝わり、香月が本当にリーダーなのだということを感じさせられる。


リュンマと会話をしているときには見られない威厳さだ。



「…村の人達はどうするんですか…?
おいて行っちゃうんですか?」



香月の判断に納得いかないのかまたもや反論するヒサノ。


人を敬い慕い、そのような人になりなさい、と言われ続けられていた巫女。


その巫女達が敬い慕う女神メルス。


ヒサノにとってこの村人達をおいていくことは神に反することなのだろう。

そして自分にも。



「しかたがない。
救ってやりたいのは山々だがこうも霧が濃くては何も見えないだろう。
…そして、スノーリアの言うとおりだ。
この猛毒のなか生き残りはいないだろう…」



悔しげに、悲しげに、香月は表情を歪めて俯いた。


本当は彼女だって村人をおいていきたくはないはずだ。


だが、彼女が国王騎士兼リーダーであるかぎりそれは許されない。


まずは任務が最優先。


それが国の決まりだ。










< 145 / 506 >

この作品をシェア

pagetop