Samsara

死神の頭の中で、誰かが囁く。


(楽にしてあげなよ?)

(苦しむ彼女を 見たくないだろう?)


囁くのは、悪魔?

それとも、天使?


「(うるさい…黙れ…っ!)」


死神は

忌々しい邪念を振り払い

細いリーゼルを抱き締めた。


「言ったでしょう?
 楽に死なせてなんてやらない、と。」


流れ落ちそうな 瞳からの雫を

必死に耐える。


それでも、落ちてしまう雫を止める術を

死神は知らない。


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