ほのかハイスクールグラフィティ
片思いシンフォニ―

(1)

 雲一つない快晴……まさに青空一色だった。
 今日は三船高等学校の卒業式。
 校庭の一角に人集りが出来ている。
 テニス部の後輩たちに手を振る彼、緒形明典。
 テニス部は部員が女子の方が多いせいか、彼を取り巻くのも当然女の子ばかりだ。
 わたしは笑顔で彼後輩たちと談笑する彼の姿を少し離れた場所で見ているだけだった。
「ほのか……」
 そう声をかけたのはわたしの親友、愛海だ。わたしの視線の先を見て、それが緒形である事を認めると大きく、頷いた。
「彼に告白しないの?今日が最後だよ」
 わたしは首を振ると、下を向いた。
 とてもじゃないが、あの輪の中に入って彼に気持ちを打ち明ける勇気などない。
「全く、ほのかはもう!こっちに来なさいよ」
「ちょ、ちょっと愛海、や、やめてよ!」
 慌てて、手を引く愛海の腕を振り払おうとしたが、愛海はわたしの右腕を強引にガッチリ掴んで離してはくれない。
 結局は、緒形を取り囲む輪へとわたしは押し込まれてしまった。
「ま、愛海、やめてってば」
 わたしと愛海が緒形の前に立ったとたんにガヤガヤしていた周りの人たちの会話が途切れた。
「き、君たちは誰だ?」
 訝しげに見る彼の顔を見ていられなくて、わたしはまた下を向いた。
 ふぅーとため息が聞こえる。緒形の口から発した邪魔者を咎めるため息だ。
 そんな緒形の態度にムッとした愛海が口を開いた。
「わたしは一年B組の矢沢愛海と言います。この子が香取ほのか。ほのかがあなたに話があるっていうんで、連れてきました」
 とたんに周りがまた喧騒に包まれる。
 中には、
「こんな地味なコが緒形さんに話があるなんてっていったい、何?まさか、恋の告白だったりして。やだあ、信じらんない」
 とあからさまに言う子もいる。
 わたしの頬は羞恥心で真っ赤に染まった。
「悪いけど、後にしてくれないかな?今、同じ部の仲間と話しているんだ。邪魔しないで欲しいんだけどな」
 冷たく突き放すような上から目線の言い方。
 わたしは思わず、唖然とした表情で緒形の顔を見てしまった。
 緒形はあれっ?って顔をした。もう一度、わたしの顔を見直して、
「か、香取ほのか……思い出したぞ。き、君は半年前のあの時に名前だけ告げて、立ち去った子だったのか!」
「えっ?」
 緒形の驚いた表情。わたしはもう一度、彼の顔を見直して、あっ!と小さく叫んでしまったのだった。
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