Hair cuts

浩人十九歳・秋

「レバーがとうとういかれちまった」

へへへと、親父が笑い、発泡酒のプルトップを開けた。ぷしゅっと、小気味良い音が部屋中に広がる。まだまだ残暑の厳しい初秋。汗で肌に張り付くタンクトップがじれったい。

最近、体調の優れなかった親父は、顔色が異常に悪いのを柔道仲間に指摘され、そのまま引きずられるようにして病院へ行き、肝硬変の初期である事を告げられたらしい。あれだけ毎日酒を飲んで、初期段階であるというほうがよほど奇跡だと思うのだが、親父は、「俺もとうとうお仕舞いか」なんて弱気な事を言う。

「バカ言うなよ。殺しても死なないくせに」

そう皮肉ると、親父はまたへへへと笑った。それから、変な頭だなと、俺の髪の毛を馬鹿にした。俺の髪の毛は今ピンクと黒のツートンカラーで、美容室へ行く金が無いので市販のカラー剤で遊里に染めてもらった。

確かに、恐ろしく変だった。
< 127 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop