Hair cuts
「あのさ、うまくいったみたい」

電話を切ると、遊里が報告した。

「それって、付き合うってこと?」

遊里が頷く。その急な展開に私は驚き、興奮した。今すぐ愛華を捕まえて詳しい話を聞きたかったけれど、

「だから、今日はこれで解散だって」

浩人がそう言うので、がっかりしてしまった。と、同時に私を置いてけぼりにした愛華を恨めしく思った。

「そう。じゃあ、私も帰るね」

「なら、送ってくよ。俺、車で来てるから」

「え?いいの?」

「いいよ、別に」

遊里はぶっきらぼうに言うとすたすたと歩き始めた。人ごみの中、私はひとつ飛び出た遊里の頭を見失わないように必死で追いかけた。

「ああ、ごめん」

私の歩くのが遅いと気づいた遊里が立ち止まり、ポケットから手を出しかけて、また引っ込めた。

もしかして、手を繋ごうとした?

でも、それを確かめる勇気がなくて、私たちは程よい距離を保ちながら肩を並べ、ゆっくりと歩き出した。

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