Hair cuts

「思っていたより、大変です」
　
思わず漏れた本音に、先生は大きく頷いた。

本当に思った以上に勉強することが多くて大変だった。「美容学校の勉強＝髪の毛を切る」だとばかり思っていた私は、まず渡された教科書の多さに驚いた。美容実議論、物理・化学、保健、関係法規、衛生管理。まずこれが国家試験の筆記科目で、その他にも、文化論や社会福祉、運営管理や、英語の授業まであるとは思わなかった。それと実習も。自分の不器用さにたまに泣きたくなるほどいらだつ。すぐにハサミを持てるものだとばかり思っていたがっかりだ。

「二年なんて、あっという間よ」

「あっという間？」

「来年の夏には就職活動と国家試験の勉強に追われてるわね」

「入学したばかりなのに、そんなこと考えたくないです」

「あら、でも本当のことよ」

先生は言い、もう一度「あっという間」と小さく呟いた。

その時、ごぉん…と大きな音がして、電車が通過した。電車が通るたび、学校全体ががたがたと揺れた。がたんがたんという騒音にまじって、

「明日からカットの練習にはいろうかなぁ」

先生の声が微かに聞こえた。