Hair cuts
ワインディングの実習はマジでだりぃ。

髪の毛をスライスしてペーパーに乗せ、ロッドに巻きつけてゴムをかける。その次も、その次も、またその次も。この地道な作業を何十回も繰り返すなんて退屈で死にそうだ。

ハサミ、ハサミ、シザーズ!

俺はしゃきしゃきやりたくて美容師を目指したのに、なんでこんなことしてんだ。カットは美容師の基本中の基本だろう?なのに、この巻き巻き作業ばっかりやらされるなんて耐えられん。でもオールウェーブはもっといやだ。あんなん覚えたって、何の役にもたたねねぇ。てか、今時あんな髪型するやつなんかいねぇし。もしいたとしたら断固断る。だいたいにしてローションて何?ローションつったらローション。あれの時に使う潤滑油だろうが。

「やっぱ、愛華のきれい。上手」

「そんなことないよ」

「だって、ペーパーが全然見えてないし。面もぼこぼこしてないし」

「そう?でもさくらはオールウェーブが得意でしょう?あたしはだめ。試験にでたら落ちるかも」

「そんなことないって。愛華は器用だもの」

斜め前の席で、愛華とさくらが互いの作品を褒めあっている。なんで女同士って褒めあう事が好きなんだろう。絶対自分のほうが秀でてるとか、こいつには負けたくないとは、腹ん中では思ってるくせに。
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