Hair cuts
でも、本当のところ、は少し違った。保健室登校だったあたしは、出席日数や、勉強の面で大学への進学が難しく、かといってこの不景気で就職先もないのが現状だった。何より、(あんたの進学費用ぐらいあるんだから、好きなことをやっていいんだよぉ)と言う祖父母の気持を裏切るのが苦しく進学するのが育ててくれた祖父母への恩返しと考えた。それで、専門学校へ行くことに決めたのだ。

その中から美容学校を選んだのは、ゆくゆくは一人きりでも経営できる職業だったから。

あたしは団体行動が苦手で、人とうまくやっていけない。おばあちゃんは看護師や保育氏や栄養士を勧めてくれたけれど、それらの職業だと、病院とか、保育園とか、学校とか、会社や組織に属さなければ成り立たないわけで、あたしはそれが嫌だった。

美容師なら、技術さえ身につければ、いずれ独立できると思って選んだわけだけれど…。現状はそう甘くなかった。

まず、独立できるまでの技術を得るまで何年もかかるから必然的にどこかのお店で長いこと支えなければいけない。それに、例え独立できたとしてもお客さんがつかなければ経営は難しい。腕は良くても、客がつかない美容師もいるということはインターンへ行ってからわかったことだ。話し上手で、聞き上手で、愛想のいい子を指名するお客さんがほとんどで、そのどれも、あたしの苦手な事ばかりだった。
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