LOVERS♥HOLICK~年下ワンコと恋をして
「だけど結婚はするつもりだ。」

そう言って俺の前に割っていった親父は、

見覚えのある表情は一つもなく、

真剣そのものだった。


「そうですか。おめでとうございます。」

親父から目をそらし、

彼女に頭を下げると。


「ありがとう。」

少し声を詰まらせていた。

人にはそれぞれドラマがあって、

誰もがその主人公だ。

この人が、

親父を変えた?




「すまなかった。」



は?



「失ってみて初めて分かった。

 命が生まれてくるいう奇蹟を。


 若かった俺にとって子どもなんて厄介なものとしか思えなかった。


 失敗すればできて、勝手に生まれてくる厄介なもの。


 自分が親になったっていう自覚がなかった。」



「親父?」


「一応反省はしているの。


 許してあげてくれない?

 彗君。」


なんなんだ?


親父を見ればもうすでに俺に背を向けてる。


どんな表情か読み取れないけど、

いつものよ嘘クサい演技ではないのかもしれない。


「俺も、ガキだった。」


俯いて漏らした言葉は、

誰かに届いただろうか。




 









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