白いパーカーと黒いパーカー
白いパーカーと黒いパーカー
私の家の周りは都会ながらも、夜になると星がよく見えた。

私の家はいつだって人がいない。

帰りを迎えてくれる人も。

遅い帰宅を怒る人も。

ともに食事をする人も。

そんなことはもうなれていた。

むしろどうでもよかった。

今日みたいに雲一つなく晴れていて、乾燥した空気が流れる日は私のお気に入りの日。

こんな日は星がよく見える。

ベランダからでも十分だけど、どうせなら広い空を見たくて外に飛び出した。

私の背後で振り子時計が真上に針をそろえて鐘を鳴らした。

「この時間になっても帰ってこないのが悪いよ」

少し冷たい風が頬をかすめた。

私は一度身震いをして黒いパーカーのチャックをあげた。

ポケットに入れっぱなしだったiPodのイヤホンを耳に差し込み、音楽を再生する。

都会とはいえど、夜は不審者が多い。

声をかけられても無視ができるように、見つかりにくいようにと服装は前々から同じ物。

真っ黒な服で、私は夜に溶けていきたかった。



< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop