魅惑の果実
美香ちゃんが隣に座り、私は身体を起こした。



「いつなの?」

「へ?」

「デートよ」

「まだ日にちは決まってない」

「日にちも決まってないのにぐじぐじ悩んでるわけ? もう、さっさと日にち決めちゃいなさいよ」



そんな簡単に言わないでよー!!


あれ社交辞令だったかもしれないし……私だけが行く気満々なのかもしれないし……。



「気分は晴れないは、勉強も手に付かないはでいい事ないんだから、ほら、今電話しちゃいなさい」

「い、今!?」

「いいじゃん、いいじゃん!! そーだよ、電話しちゃいなよ!!」



確かにそうだよね。


食事の日程が決まらない事には、落ち着いて日常生活すら送れない気がする。


断られたら断られたで、桐生さんにとって私はその程度の女で、ただのキャバ嬢に過ぎないんだと思うしかない。


そうだったら、今日はとことん泣いて、とことん食べて、記憶なくすくらい呑んでやる。



「電話してくる……」

「頑張れ美月!!」



明日香にエールを送られながら、私はケータイを持って廊下に出た。





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