魅惑の果実
普段はあまり来る機会のない高級ホテル。


ロビーにはいかにもお金を持ってそうな人たちばかり。


私大丈夫かな?


絶対浮いてるよね?


洋服は美香ちゃんに見たててもらって、少し清楚系なシンプルでラインが綺麗なワンピースにした。


髪の毛もゆる巻に……と思ったけど、気合を入れてきてるってモロばれしたら恥ずかしいからやめた。


ドキドキが止まらない。


手汗もヤバイ。


あー……桐生さん早く来ないかな。



「神楽(かぐら)先生、本日はお忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございます」



え……?


今、神楽って言わなかった……?


恐る恐る顔を後ろに向けると、よく知っている顔が居た。


目が合いそうになり、慌てて顔を背けた。


顔が上げられない。


考えてもなかった……まさかお父さんが居るなんて……。


どうしよう……見られた?


そんな事ないよね?


心臓が激しくドキドキしている。


そのドキドキはさっきまでのものとは全く違うもので、凄く気分が悪かった。





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