魅惑の果実
美香ちゃんの顔色が変わった。



「桐生さんって言うの? その人……」

「……うん」



そう言えば美香ちゃんには名前言ってなかったかも。



「何してる人?」

「私も詳しくは知らなくて……桐生さんはただの経営者だって言ってた。 桐生さんの事知ってるの?」

「あ、ううん、私が知ってる人とはきっと違う人だと思う。 珍しい名字だからもしかしたらと思ったけど、話で聞いてる人とは雰囲気違うから、きっと違うと思う」



そう言いながらも腑に落ちない顔をしている美香ちゃん。


もしかしたら、美香ちゃんの中の桐生さんと私の知ってる桐生さんは同じ人?


そんなわけないよね。


私や美香ちゃんは色んな人と出会う場所にいる。


だから、いくら珍しくても桐生なんて名前の人と会うこともある。



「それで、美月はどうするの?」

「……桐生さんに会いに行く。 会って、顔を見て話がしたい」

「そう、なら今日はもう熱いお風呂にでも入って、スッキリして何も考えずに寝なさい」

「うん、有難う、美香ちゃん」



話を聞いてもらったからか、少しスッキリした。


美香ちゃんみたいなお姉ちゃんがいたら、凄く甘えん坊になりそう。





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