魅惑の果実
次の日、仕事が終わって桐生さんのマンションに行った。


広くて豪華なエントランスにはコンシェルジュがいる。


エントランスのソファーに座って約一時間。


ちょくちょくコンシェルジュの視線を感じる。


ここにはきっと富裕層の上客しかいないだろう。


私はこんな頭だし、その人たちの愛人か何かだと思われてるのかもしれない。


はぁ……。


何度も桐生さんに電話をしようか考えた。


でも、出来なかった。


会ってもらえないどころか、話すらしてもらえなかったらきっと立ち直れないから。


ボーッとしていると、気分がどんどん落ち込んでいく。


もう寝ちゃったのかな?


それとも、まだ呑んでるのかな?


私は桐生さんの事を相変わらず何も知らない。


私に接するように、咲さんにも接しているのかな……。


その可能性もあるんだよね……。


マイナスな事ばかり考えてしまう。


そんな事を考えていると、あっという間に二時間が過ぎ、私はソファーから立ち上がった。


また出直そう。





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