魅惑の果実
桐生さんには今日の事は言ってない。


言ったところで「そうか」の一言で終わっちゃうだろうし……。


電話で話はしても、ずっと会ってない。


ちゃんと顔を見て話がしたい。


抱きしめてもらいたい。


桐生さんもこんな風に思ってくれてんのかな?


表情に出さないからわかんないんだよね。



「ごめん、お待たせ」

「あっ……え!?」



振り向くと翔が立っていた。


っが、姿を見てビックリ。



「な、な、何で!? 何で制服!?」

「あははっ、美月だってそうじゃん」

「いや、まぁ、そ、そうだけど……っ」



翔も歳誤魔化してクラブに入ってたって事!?


しかもこの制服……。



「凄っ!! お坊ちゃま学校じゃあん!!」



唖然とする私の隣で、明日香が驚きの声を漏らした。


金持ち校で有名な高校の制服。


眩しすぎる……。



「立ち話もなんだしさ、どっか入ろうよ」

「あ、うん……そうだね……」



驚かせるつもりが、逆に思いっきり驚いてしまった。


翔は全然動じてない。


何で?





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