魅惑の果実
危ない人。


だけど私にとっては愛しい人。


そう思うと凄く変な感じ。



「ずっと忙しかった?」

「それなりにな」

「桐生さんって疲れた顔しないよね」

「お前がやらかさない限りな」



私にもしものことがあったら心配って事?


何にも動じない桐生さんにそう言われると嬉しかった。


好きだから気にかけて欲しい。


でも、好きだからこそ心配をかけたくない。



「ただでさえやる事が多いんだ、面倒ごとを持ち込むなよ。 俺の手を煩わせるな」

「うわぁ〜その言い方ヒドっ!! 感動した私が馬鹿だった」



口ではそんな事を言いながら、きっと本心は違うんでしょ?


だって、声も表情も柔らかい。


貴方の事が少しずつわかっていく度、気持ちが高揚する。



_コンコンコンッ!!



「桐生さん!! いらっしゃいませ!!」



ノックの音と同時に咲さんが姿を現す。


そして当たり前の如く桐生さんの隣に座る。


嫌だと思う気持ちは変わらないけど、前よりも少しは余裕でいられた。



「桐生さん、ご馳走様でした」



グラスを合わせ、私は席を立った。


咲さんはそんな私には目もくれない。





< 174 / 423 >

この作品をシェア

pagetop