魅惑の果実
ふわふわと浮かぶ体。


逞しい胸板に擦り寄り、身を任せた。


緊張する。


恥ずかしい。


でもそれ以上に期待してしまう。


とろけてしまいそうなほど甘い時間を……。



「おとなしくなったな。 どうした」



ベッドの上に寝かされた私は頬を膨らました。


見上げる先の桐生さんの顔は余裕満々。



「まだ、緊張……する……」

「ベッドの上では素直だな」

「いつも素直じゃん」

「その余裕はどこまで続くんだろうな」

「えっ!? あ……っ」



余裕なんてないよ!!


元々なかった余裕がどんどんなくなっていく。


桐生さんに触れられた場所全てが熱を持つ。


考える事を許してくれない。


感じることだけに集中しろと言われてるみたい。



「好、きっ……」

「本当にお前は可愛いな」



桐生さんも好きでいてくれてるよね?


そう思ってていいんだよね?


この優しい手と温もりは私だけのものなんだよね?


たくさんの思いが募るのに、言葉にすることができなかった。


その理由は自分で分かっているようで分かっていない、とてもあやふやなものだった。





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