魅惑の果実
体育館に着くなり、凄い歓声が聞こえた。


外でこんなに聞こえるって……中に入ったら煩そう。



「ヤバイ〜!! 遅れをとったぁ〜!!」

「うわっ」



明日香に手を取られ、走る明日香に合わせて足を動かした。


後ろからは翔の笑い声が聞こえる。



「ちょっと! 笑ってないで案内してよ!!」

「そこの階段を上れば、二階の観戦席に行けるよ」



ますます急ぐ明日香は靴を脱ぎ捨てた。


私も靴を整える暇なく、階段を駆け上がった。



「きゃぁぁぁ〜!! 西條(さいじょう)君〜!!!!」



観戦席に着くなり、隣から甲高い女の声がしてビックリした。


てか何これ……。


今日練習試合なんだよね?


たかが練習試合になんでこんなに人がいんの!?



「私たちも前に行こ!!」

「え、え!?」



グイッと腕を引っ張られ、私と明日香は強引に一番前を陣取った。


すっごい殺気を感じるんですけど……。


女って怖っ!!



「健人く〜ん!! 頑張ってぇ〜!!」



明日香の声が届いたのか、健人は観戦席を見上げて私たちを見つけると一瞬笑みを零した。


その瞬間更に全身に殺気を感じ、私はまともに笑顔を作れなかった。





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