魅惑の果実
……何故?


いったいどうして、こんなことに?


パーティーが終わったら直ぐに桐生さんのところに行くはずだったのに、半ば強引に実家に連れ戻されてしまった。


そして書斎で父親と二人きり。


気まず……。



「音大を受験したいらしいな」



え!?


何でそれを……。



「学校に問い合わせた」



成る程ね。


ってか、普通は娘に直接聞くでしょ。


私たちは本当に親子関係が成り立ってないんだなと思った。



「単刀直入に言おう。 大学はT大しか許さない」

「は!? 何それ!!」



T大ってあんたが出たクッソ頭いい大学じゃん!!


仮にそこ受けたとして私が受かるとでも!?



「私の頭じゃ何回受けても受かんないから」

「お前は受験をするだけでいい。 あとはこちらでどうにかする」



それって裏口入学ってこと?


頭可笑しいんじゃないの?


本当、腐ってる。



「馬鹿言わないでよ。 私に音大以外の選択肢はない。 はなからお金を出してもらうつもりもなかったし、自分で貯めたお金でどうにかするから、口出ししないで」





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