魅惑の果実
視線がぶつかり合い、私はおもいっきり睨みつけた。


そっちがそんな感じでくるなら、私だって遠慮しない。



「それほど音大へ進みたいのならば、譲歩してやらんこともない。 お前が私の条件をのむならな」



この人の口から譲歩なんて言葉が出てくるなんて、ろくな条件じゃない。


聞かずに文句言うだけ言って帰る?


ううん、そんなことして不利な立場になるのは私の方。


だったら……。



「条件って何?」

「私の選んだ男と結婚しろ」

「は!?」



やっぱりろくな条件じゃなかった。


気分悪い。


聞くんじゃなかった。



「馬鹿じゃないの!? デタラメなこと言わないでよ」

「たまには親の役に立つことをしたらどうだ」



何それ!?


あんただってそうでしょ!?


私の為に何かしたことあった!?


私にさせる事は全部自分の為だったじゃない。



「私の条件をのまず、音大を受けるというのならそれもよかろう。 だが、それこそ何度受けても同じだろうがな」



っ!?


ムカつく……ムカつく、ムカつく、ムカつく……っ!



「マジくたばれ」



顔も見ていたくなくて、同じ空気も吸いたくなくて、私は書斎を後にした。






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