魅惑の果実
痛〜っ!!


書斎のドアを力一杯グーでぶん殴ってやった。


案の定ドアはビクともしない。


私の手が赤くなっただけ。



「お姉ちゃん……」



どうやら美羽が廊下で待ってたらしい。


声を掛けられるまで気が付かなかった。



「だ、大丈夫?」



美羽は自分のやりたいことをやらせてもらってるんだろうか。


息が詰まる様な生活を送ってるんだろうか。



「美羽こそ大丈夫なの?」

「え……?」

「この家で生活してて、辛くない?」

「ううん……私は大丈夫だよ」

「そ、ならいい。 じゃ、私帰るね」

「待って! 手当てしなきゃ!!」

「このくらい平気」



心配そうにオロオロする美羽に手を振って、私はさっさと家を出た。


あーあ……何なんだろう。


この感じ。


苛つくけど、泣きそう。


どうしたらいいの……?


久しぶりに歩く実家から駅までの道のり。


ぐちゃぐちゃ考えていた様で、何をどう考えていたのかよく思い出せない。


自分の運命をどう変えたらいいのか分からない。


どんな風に行動するのがいいのか、分からなかった。





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