魅惑の果実
なんかいいな。


純粋に好きって感じ。


私なんか最近は好き以上に悩みの方が多くて、身動き取れなくなってる気がする。



「次はいつ会うの?」

「土曜日! 健人君の部活の後会うんだぁ」



順調みたいだし、明日香と健人が付き合うのは秒読みだろうな。



「美月は週末は桐生さんのところ?」

「ん〜どうだろ。 分かんない」

「また居ないかもしんないの?」

「まぁ、そうだね。 行く元気があったら行こうかな」



……気持ち的に元気があったらね。


ベッドの上で私がどれだけ好きだと伝えても、あの日桐生さんが好きだと言ってくれたのは、私がおねだりした時のあの一度だけだった。


無理矢理言わせちゃったかな……なんて、未だに考えてしまう。


_キーンコーンカーンコーン……。



「ヤバ! 次移動じゃん!!」

「あ! そうだった!!」



私たちは慌てて食器を片付けて、急いで食堂を出た。


こんなドタバタも残り僅かだと思うとちょっと寂しい。


ふとそう思ってしまった。





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