魅惑の果実
次に目を覚ました時には、側に温もりはなくなっていた。


時計を見ると九時を回っていた。


起きよう。


体を起こすと、桐生さんの香りが鼻を掠める。


今は桐生さんの香りだけど、私も同じ香りになれたらいいな……。



「ふあぁぁぁ……」



腕を上げて背筋を伸ばすと、自然と欠伸が溢れた。


眠いけど流石に三度寝はダメだよね。


もう一度ベッドに横になりたい衝動を抑えて、泣く泣くベッドから降りた。


顔を洗ったり歯を磨いたり、とにかくグダグダしながら身支度を整えた。


長袖のロングニットにスキニーデニムのパンツを合わせ、靴はフラットシューズ。


そしてスッピンにはかかせないサングラスをかけ、財布と鍵を手に持って家を出た。


普通ならコートやダウンを着ないと寒くて外を歩けない時期だけど、マンションの地下のスーパーに行くだけならこの格好で十分だ。


地下にスーパーがあるとかなり便利だけど、高級マンションに完備されているスーパーなだけあって、一般的なスーパーに比べてお値段が可愛くない。






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