魅惑の果実
長く濃厚なキス。


乱れる息が恥ずかしくて顔を背けたくなる。


けど、桐生さんがそれを許してはくれない。


_ブーブーブーッ!


腕にかけているポーチの中のケータイが震え、一気に現実に引き戻された感じがした。


恥ずかしさを誤魔化すように慌ててケータイを見た。


ディスプレーには大雅さんの名前が表示されていた。


そうだった!


送ってもらう事になってたんだった!



「あっ!」



急いで電話に出ようとしたら、桐生さんに取り上げられてしまった。



「俺だ」



俺だって……人の電話に勝手に出ないでよね。



「あぁ、美月は俺が送る。 あぁ、分かった、伝えておく」



桐生さんは電話を切ると、ケータイを返してくれた。


ジッと顔を見つめると、手の甲で頬を撫でられた。



「お前を抱きたい」

「は!? え!? な、何言ってんの!?」



そんな色気たっぷりの顔と声でそんな事言わないでよ!!


昔の私なら完璧流されてたけど、今はそうできない理由もある。



「私帰んないと。 帝が待って……」

「それなら心配はいらない。 美香が面倒を見ていてくれるそうだ。 お前の口から話が聞きたい」

「……うん」





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