魅惑の果実
帰る用意をし終えてお店の外に出ると、黒塗りのリムジンが止まっていた。


そして後部座席のドアの前には良く知っている人が立っていた。


少し老けた様な気もする。


あれから数年経ってるんだもんね。



「蓮見さん、お久しぶりです。 今日は私も一緒にお願いします」

「お久しぶりです。 お元気そうで安心致しました」



そう言って、蓮見さんはドアを開けてくれた。


車に乗り込むと、桐生さんに手を引かれた。


腰を抱き寄せられ、広い車内で密着する体。


ドキドキせずにはいられなかった。



「こうして二人で車に乗るの久しぶりだね」

「あぁ、そうだな」



微笑んだ桐生さんの顔に見惚れた。


相変わらず逞しい体に整った顔。


この人は衰えと言う言葉を知らないんじゃないかと思う。


仕事を始めて色んな男性と知り合う機会はあった。


勿論カッコイイ人や素敵な人はたくさんいた。


けど、桐生さんの様に男として魅力を感じる人は誰一人としていなかった。





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