魅惑の果実
いつもの様に見送りの為エレベーターで一緒に下まで降りた。


エレベーターを降りると、小西さんが急に足を止めた。


振り返ると真剣な顔をした小西さんと目が合った。



「小西さん……?」

「莉乃ちゃん、俺と付き合わない?」

「え!?」



思いもよらない告白に、頭の中が真っ白になる。


小西さんの事は大好きだけど、でも……。


桐生さんの顔がちらつく。


消したいのに消えない。



「私……」



声が震える。


小西さんと付き合ったら、きっと大切にしてもらえる。


きっと、私の心を温かく包み込んでくれる。



「大切にする」

「あっ……」



小西さんの腕の中。


欲しかった温もりとは違うけど、それでも今の私には十分すぎるくらい温かくてホッとした。



「宜しくお願いします」



気付けば口からそう零れ落ちていた。


嬉しそうに微笑む小西さんの顔を見た瞬間、後悔の念に襲われた。


これから好きになればいいと自分に一生懸命言い聞かせた。





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