魅惑の果実
夏休みに入っても、勉強をして、夜はキャバクラで働いて……そんな生活は変わらない。


実家に帰らなくても親から連絡はない。


お金だけが振り込まれてる。


私に連絡をしてくるのは妹くらい。


だけど、私は一度も返事をしたことがない。


酷い姉なのかもしれない。


それでも、返事を返す心の広さを私は持ち合わせていない。



「少し痩せたな」

「そうかな? そんな事ないと思うんだけど……」

「ますます色気がなくなった」

「煩いなぁ」



桐生さんと軽口を叩き合うこの時間がどうしようもなく好き。


ただのお客様としてではなく、桐生さんが好き。


その事を知られたいような、知られたくないような……複雑な想いを胸に、いつも接している。



「桐生さんはふくよかな方がいいの?」

「そういう意味で言っているわけではない。 お前は痩せていると貧相に見えると言いたいんだ」



貧相って……もう少し言葉選んでよね。


凹みそうだけど、凹んでる時間がもったいないと思うほど、この時間が好き。





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