君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
そして副社長は至近距離を保ったまま、私の耳元でそっと囁いた。


「俺の名前は副社長じゃない」


えっ...?


その言葉に無意識のうちにまた後ろを見てしまった。

そこには今までに見たことない真剣な表情の副社長がいて、自然と私の胸は高鳴ってしまう。


なっ、なに?一体どういう意味?


言葉の真意が分からなくて、じっと見つめてしまう。

それに答えるかのように副社長も私から視線を反らすことなく見つめている。


どれくらいの時間が過ぎただろうか。
たった数秒間なのかもしれないけど、私には長く感じて。


「...な~んて、ね!びっくりした!?」


「へっ?」


一瞬にして崩れた表情に随分と間抜けな声が出てしまった。


「あはは!どうだった?本気モードの俺は」


何事もなかったかのように笑いながら離れていく副社長。


そんな副社長を見てやっと我に返ることが出来た。


「ちょっと、副社長!酷くないですか!?人をからかうのは本当にもうやめて下さい!」


本気で騙されて動揺しちゃって!
そっ、それでちょっぴりドキドキしちゃった自分が恥ずかしい!!


「やめないよ?だって楽しいから」


「っ、楽しい!?」


こっちは怒っているというのに、気にすることなく笑っている副社長。


「さて、と。櫻田さんも戻ってきてくれたし、真面目に仕事しようかな」


「是非そうして下さい!」


「はーい!」


イライラしながらも溜まっている仕事を再開する。


秘書課のみんなに激しく同意するわ。
この人の秘書だけはやりたがらない気持ちが!


「...あっ。櫻田さん」


< 100 / 368 >

この作品をシェア

pagetop