君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
会場に入るなり、真っ先に向かった人物。
きっとこの人がさっき副社長が言っていたお世話になった人であり、このホテルの創設者なんだろう。

副社長と握手している姿を副社長の後ろで見ていると、私の存在に気付いてくれた。

「大杉君、こちらの綺麗な方はもしかして…」

やばい!挨拶しないと!

慌てて一歩前に進み、頭を下げる。

「初めまして。副社長の秘書を務めさせて頂いております、櫻田菜々子と申します」

「…秘書?恋人じゃなくて?」

え?

「やだな、彼女は優秀な俺の秘書ですよ。第一彼女にはちゃんと他に婚約者がいるんですから」

「なんだ、そうか。…ざんねんだな、やっと君も身を固めるかと思ったのに…」

「えっと…」

どうしよう。こんな時はなんて答えるのがベスト?

慣れない社交の場に言葉が出てこない。

「ほら、櫻田さんも困ってるじゃないですか。女性が同伴だからって恋人であることはないんですからね。それより、是非今回のプロジェクトに関わった皆さんを紹介してくれませんか?挨拶したいですし」

「あっ、あぁそうだな」

「櫻田さんはなにか食べてるといいよ。すぐ戻るから」

「あっ、はい」

…きっと気遣ってくれたのよね。私が困っていたから。

人混みの中に消えていく二人の姿を見送り、近くの椅子に腰かけた。

何度かこういった場には来ているけど、何度来ても慣れないのよね。それにこんなに大きな会場に来たのは久し振りかもしれない。

遠くで数人と挨拶を交わしている副社長。
今のところ体調は大丈夫そうかな…?

副社長って鈍そうで鋭いのよね。前も私が秘書課のみんなとうまくいっていないことに気付いてくれたっけ。
そのおかげで今みんなとうまく仕事ができているのよね。
< 130 / 368 >

この作品をシェア

pagetop