君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
すごい...。

さっきまであんなに執拗にあの女性に迫っていたというのに、副社長の一言でこんなあっさり見向きもしなくなっちゃうなんて...。

あの三田社長ですら副社長のこと、お気に入りってことなのよね?

本当にすごいの一言しか出てこない。

きっと私があの勢いのまま飛び出して行っても、なにも解決なんて出来なくて、下手したらさらに状況を悪化させていたに違いないもの。

だけど...。

次第に散っていく人。
その隙間から見える三田社長と副社長の姿。

もう既に飲まされているけど、大丈夫かしら。
ただでなくても熱があって体調が悪いって言うのに。

「全く。昔から変わらなくて困るよ、大杉君には」

「あっ...!」

隣に来たのは、このホテルの創設者。

「さっき自己紹介してなかったね、木村と申します。...櫻田さん?」

そう言って笑う木村さん。

「櫻田さんも大変じゃないかい?あんな人の秘書だなんて。一時は橘君で落ち着いていたから安心していたけど、橘君が産休に入ってからは本当入れ替わり立ち替わりだからね。...櫻田さんも正直辞めたいと思ってるんじゃないかい?」

「いいえ、そんなっ...!」

そんなことはないよ。

「...副社長の仕事に対する姿勢は、尊敬しております。...たまに疲れちゃう時もありますけど、でも私は副社長の秘書としてこれからも頑張りたいと思っています」

苛つくことはあるけれど、本当不思議と辞めたいと思ったことはない。

「...そっか。櫻田さんは少し橘君に似ているね」

「えっ...橘さんにですか?」

私が?

「あっ、橘さんと面識ある?」

「はい、同期なので」
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