君が好き。2～大好きな彼と結婚する方法～

「バカだな、櫻田さんは」

「えっ...」

腕が離された瞬間、私の横をすり抜けていく副社長。

「ちょっと待って下さい！副社長！？」

慌てて後を追い掛け、咄嗟に副社長のスーツの裾を掴んでしまった。

「...だから言っただろ？女性が行くものじゃないって。こういう時は男性に頼りなさい」

そう言うと裾を掴む私の手をそっと離す。

「いいかい？櫻田さんはここから絶対に動かないこと。三田社長は君のことを覚えているはずだ。...いいね？」

「...はい」

返事を返すと満足そうに笑い、副社長は人をかき分けて前へと進んでいく。

やだ、私ったら咄嗟に返事なんてしちゃったけどなに副社長に行かせたりしてるのよ。
見つからないようゆっくり進み、人混みの中から様子を見る。

「三田社長、お久し振りです」

「...あぁ、君か」

ちょうど副社長が三田社長に声をかけるところで、その様子を見ながら私の方が緊張してきてしまった。
副社長は頼りなさいって言ってたけど...あの三田社長だよ？
圭吾さんですらあんな扱いされちゃっていたのに。

「三田社長、そんな小娘より私と一緒に飲んではくれませんか？」

「あぁ？君と？」

そう言うと副社長はいつものあのにこにこ笑顔で話し出す。

「はい。是非三田社長の経営理念について色々聞かせて頂けると嬉しいです。...自分は三田社長をとても尊敬しているので」

「...そうかぁ？まぁ、確かにそうだな。こんな小娘なんかより君と飲んだ方が楽しそうだな」

「そうですよ。せっかくのオープニングセレモニーで美味しいワインもたくさんあります。とことん付き合いますよ？」

そう言うと三田社長は満足げに副社長の背中をバシバシと叩き、豪快に笑い出す。

「じゃあ今夜はとことん付き合ってくれよな！？」

「はい、喜んで」