君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
「今日は大丈夫だったの?なにもされていない?」

「…またそれ?大丈夫よ、そんな仕事中になにかされるわけないじゃない」

あの日から亜希子は決まってこの質問をしてくる。

「あの副社長よ?なに仕掛けてくるか分からないでしょ?」

更衣室には何人か女性社員がいて、亜希子は誰にも聞こえないように私の耳元で囁いてきた。

「出張中も気をつけなさいよ?鍵は絶対に閉めてね。…菜々子ってどこか抜けているから心配だわ」

そう言いながら溜息を漏らす亜希子はまるで私も母親のよう。

「分かってます。そこはちゃんとしてるわよ。…もう大人なんだから」

「どうだか。…さて光太迎えに行かないと。あなたは荷物を取りに帰るんでしょ?」

「…うん。出張に行く準備もしなくちゃいけないし」

きっと圭吾さんは忙しくてまだ仕事終わらないだろうし、今帰っても鉢合わせすることはないだろうし。

「分かったわ。先帰ってご飯の準備しておくから」

「いつもごめんね。私の分まで用意してもらっちゃって」

ロッカーを閉めて、亜希子と一緒に更衣室を出る。

「別にどうってことはないわよ。一人増えただけじゃ変わらないしね。…大丈夫よ、東野さん今日も残業確定みたいだったし、ゆっくり準備してきても会うことはないと思うわよ」

「…そっか」

亜希子には私の考えなんてお見通しだったか。

エントランスへと続く階段を降りていくと、沢山の社員が私達と同じように帰ろうとしているところ。

「それじゃ、また家でね」

「うん」

外に出て亜希子と別れ、マンションへと向かう。
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