オモイデバナシ
引越し先は、前に住んでいた家よりも、うんとぼろっちい家だった。

正直、嫌だなあ、とか思った。

歩くとビシビシ音を立てて、今にも底が抜けそうな床。

狭い風呂。

薄暗い台所。

こんな家に。

…千秋たち、遊びに来てくれるのかな。

ボロボロの家に住んでるから、もう来てくれないかもな…。

漠然と、そんな不安がよぎる。

だっていうのに。

「こーうーちゃん!あーそーぼ♪」

引っ越した翌日、早速千秋たちは遊びに来た。

「ごめんねぇ、千秋ちゃん、トモ君、まだ引っ越したばかりで片付いてなくて」

母さんがグラスにジュースを注いで、千秋たちに出す。

ちゃんとジュースを買っておいた辺り、母さんはすぐにでも千秋たちが遊びに来る事を予想していたらしい。

千秋たちが、家がボロボロだとかそんな理由で、俺から離れていったりなんてしないって、わかっていたんだ。




…信じてやれなかった自分を、ちょっと反省した。






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