オモイデバナシ
桟橋には、島から帰る大勢の海水浴客や釣り客。

みんな口々に、楽しかった今日の一日の事を話している。

…俺と千秋は何故か無口で。

千秋は俯いたまま黙っているし。

俺はチャプチャプと音を立てる波を見つめていたりした。

…やがて船がやってきて、二人で乗り込む。

ほんのわずかな時間の船の移動。

それが余計に寂しさを誘った。

そして船は着き、俺は乗り場に飛び移る。

と。

「こうちゃん」

背後から声がした。

振り向くと。

「ん」

千秋が手を差し伸べている。

…島に行く時は、一人で簡単に船を降りていた千秋。

でも。

「ほら」

俺が手を握ると。

「ありがと」

嬉しそうに笑顔を見せて、千秋は船を下りた。

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