オモイデバナシ
でも、楽しい時間に限って、あっという間に過ぎ去ってしまったりする。

いつの間にか太陽は傾き始めていた。

そろそろ帰らないと。

夕暮れには船も最後の便が出てしまう。

「……」

二人同時に更衣室に入ったものの、先に出てきたのは俺だった。

女の子は色々と準備があるらしい。

待ちぼうける事15分。

「お待たせ」

千秋が出てくる。

…濡れたままの髪の毛の千秋は、どこか大人びて見えた。

「さ、帰ろうか」

「うん」

二人並んで、桟橋へと歩いていく。

…別に二度と来れない訳じゃない。

千秋とも、会おうと思えばいつでも会える。

だけど、この時俺の胸にあるのは、不思議な事に寂しさだった。

楽しい時間が終わった。

千秋との時間が終わった。

その事が、きっと寂しいと感じたんだろう。

千秋は、どうだったのかは知らないけれど。

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