オモイデバナシ
しばらく、二人並んで海を眺める。

…こうやっていると、5年前に二人で海水浴に行ったあの時の事を思い出してしまう。

また行こうな、なんて言ったのに、あの時の約束は果たせないままだ。

まぁ、約束だなんて思っているのは俺だけかもしれないけど…。

…悟られないように千秋の横顔を見る。

千秋はあの時の事、覚えているのかな。

今誘ったら、また一緒に海に行ってくれるかな。

今度は、彼女として一緒に、なんて…。

そこまで考えて、ハッとする。

あれから5年。

お互いに知らない付き合いなんかも増えたはずだ。

今までは俺と千秋の、共通の付き合いしかなかったけど、もうお互いに交友関係もある。

…つまり…千秋にも、彼氏がいたっておかしくはないんじゃないだろうか。

何で今までそんな事気づかなかったのか。

俺は妙な胸騒ぎを覚えていた。

いつまでも、俺の隣にいるだけの千秋じゃない。

そんな事、とうの昔に気づいているつもりだったのに。

…そう思うと、いてもたってもいられなくなる。

「あのさ…」

唇からこぼれる言葉が、自分でも抑えきれなくなる。

「千秋…今、彼氏とかいるのか…?」

< 73 / 96 >

この作品をシェア

pagetop