オモイデバナシ
「そ、そりゃあ貴重な話だからな。根掘り葉掘り聞かせてもらわないと」

何とか笑顔を搾り出しながら、俺は近くにあった自動販売機に歩いていく。

「千秋、何飲む?」

「じゃあ、オレンジジュース」

「昔からオレンジジュース好きだなぁ、お前」

そんな事を言いながら、俺は缶コーヒーを、千秋にはオレンジジュースを買ってやった。

その後に始まった千秋の彼氏の話は…。

正直、よく覚えていない。

何とか、笑顔のままで相槌はうっていた。

でも、どんな彼氏で、どこを好きになって、どんなデートをしているかなんて、そんなのちっとも頭には入ってこなかった。

…どうでもよかったんだ、そんなの。

俺は、胸の内を悟られないようにするのが精一杯で。

なのにこっちの気も知らないで、千秋はひたすら彼氏自慢をしている。

…聞いてられない気持ち、わかるだろう?

好きな女の子が、目の前で彼氏のノロケ話なんて…。

最悪な時間だ。

心の底で毒づきながら、俺はコーヒーを一気に飲み干した。

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