オモイデバナシ
そうこうしているうちに、日が暮れていた。

「お腹すいた…」

ポツリとトモが言う。

大抵の場合、こうやってトモが駄々をこね出して、俺達は帰るきっかけをつかむ。

「じゃあ、帰ろっか?」

トモの手を繋いで、千秋が言う。

「……」

唯一、俺が口をとんがらせていた。

正直、まだ遊んでいたい。

いや、それはちょっと違うかもしれない。

遊んでいなくてもよかったのだ。

俺は、一緒にいたかった。

二人と…千秋と一緒にいたかった。

「ねぇこうちゃん、帰ろう?」

なのに千秋はあっさりと、帰宅を提言してくる。

その事が、不満と言えば不満だった。

まだ一緒にいたいって思ってるの俺だけかー、とか。

いっちょ前にがっかりしたりして。

そう、要するに。

俺は千秋の事が好きだったのである。

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