もしも私が―。


   *********


「あの子は偉いわ。本当なら逃げ出してしまいたくなるほどの、ううん逃げても良いほどの痛みなのに」

「あの子って立花圭子ちゃんですか?」

「そうよ」

「そんな暗い顔しないで下さいよ!福崗さん!次の現場行きましょう!」

「分ってるわよ!次って、生存者の中橋くんの家だっけ?矢城」

「はい」                               

「よっしゃ!じゃ行くぞ!」                       

「それでこそ福崗さんですよ!」


 ――その日は夢を見なかった。


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