代償
落としそうになった。
「─────何これ」
中から出てきたのは───

「貯金通帳────?」
しかも、3冊も。
「うわぁ、気持ち悪いー」
キャーラを、凜音さんが殴った。
「───印鑑まで」
「上城がなぁ」
恐る恐る、通帳を開く。
───目潰しな額が、印刷されている。
「でも、何で3冊?」
「───」

2冊はさ、表紙に『上寺 慶佑』って。
残りは───『冬音 文香』。

───私の名前。
───何で。

「この名前───」
部屋の入り口のネームプレートの名前だよね?
「マスターさん、上寺って」
「ああ、上城の本名………っつっても、元の名前な。上時ってのは、貰った名だよ。第24代、前橋組の族長にな」

本名・上寺 慶佑(うえでら けいすけ)。
現名・上城 上時。

………知らなかった。
上時、上時って言ってたけど。
───貰った名だったんだ。

封筒の中に、まだ何か入ってる。
………手紙?
「上時総長手書きで?」
ユートさんが不思議そうに首を傾げる。
───、開く、べきだよね?

四つ折りの紙を開く。
ボールペンで走り書いた文字。



うわぁ。

………汚い………。
って、思って。

………酷いなぁ。
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