桜雨〜散りゆく想い〜
 「今の私が居るのは望のおかげ……一人の人間として、一人の女として望と出会えて幸せだって思ってる。だからこそ、中途半端な気持ちで一緒に居たくないの――」


 「ごめん……」


 それ以外に言葉を思いつかなかった。陳腐で、おそらく意味のない曖昧な謝罪。


 「謝らないでよ――私は別に諦めたわけじゃないよ?あんな小娘なんかに望を取られたりしない……」


 珍しく茜が強い言葉を使った。その表情は今まで見せた事のない程凛として、言葉の重さを物語っているように見えた。


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