桜雨〜散りゆく想い〜
 「ノンちゃん――」


 桜を見上げていた僕は声に視線を落とす。いつの間にか香がいつもの笑顔でそこに立っていた。


 「香ちゃん……具合良くなった?」


 顔を見る限りは特に悪そうには見えなかったが、一応尋ねてみる。


 「うん、心配かけてごめんね。ノンちゃんこそ顔色悪いよ?大丈夫?」


 なるほど、酷い顔をしているかもしれない。


 「大丈夫だよ。また桜を見に来てたんだ?」


 「うん。もうあまり時間なさそうだし……」


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